2000年の夏、「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2000 in EZO環境対策ボランティア」に参加、「ごみを拾わない環境対策」との出会いは衝撃的だったと語る草野さん。

北海道のことは北海道の人の手でやろう」という想いから始まって10年。「環境は多面体、いろいろな切り口でアプローチを続けたい」と活動する草野さんにお話をうかがった。
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>>【第1回】

環境は多面体
 
___前回ではRSRでのごみ分別による環境対策のお話をお聞きしましたけど、ezorockとしては他にどのような活動をしているのかお話ししていただけますか?
 
[草野]まずイベントの環境対策活動というのを2000年からずっとやってきていて、ノウハウが蓄積されて来たんですね。それで、このノウハウを僕たちだけで持っていてももったいないということで、最近は地域の商店街とか町内会のお祭りにもノウハウを伝授するという活動を昨年から展開していまして、今その需要がすごいですね。

みなさん困っていて、若い人もいないから手も回らないということで相談に来るのですが、そういったところに僕たち青年層のボランティアが参加して活動を展開しており、今年は札幌で20箇所くらいやりました。 今年の夏場には依頼が多くてお断りした所もあったんですよ。
 
___今の活動がまさに草野さんのきっかけとなったお祭りでの環境活動に繋がった訳ですね。
 
[草野]そうなんです。今地域のお祭りといっても年配の方ばっかりなので、そこに僕たちが入って行って、世代間の交流とごみを減らしていきましょうということと、環境情報を地域のお祭りで発信していきましょうというようなことを展開していて、かなり需要が増えていますね。
 
___今、コミュニティとか世代交流とか注目されている訳ですが、地域の活性化にも繋がりとても良い取り組みですよね。
 
[草野]おじちゃん、おばちゃんもやっぱり若い人が好きみたいなんですね(笑)。
 
___最近は大型商業施設がたくさん出来て若い人が離れていってるなど昔ながらの商店街が淋しくなってきている中で、大切な活動だと思いますね。
 
[草野]地域にどんどん入っていくべきですね。

また、冬には「nico」というキャンドルの灯りと音楽と市民活動を紹介する場を提供するイベントを開催したり、「Vision2050」というプロジェクトを立ち上げ、2050年までの長期的な北海道の理想像を青年層が描き、そのために今何をやっていけばいいのかというのを考えようと活動をしているチームも最近出来ましたね。あと、ラジオ放送をしたり、北海道全域に活動を展開するチームがあったり、一つの切り口だけを考えるのではなくて、環境というのは多面体だと思うので、いろんな切り口から環境ということにアプローチしていこうと思ってます。
 
___今日は事務所の壁一面に手書きで何か書かれた紙がたくさん貼られていますが、これはどのような取り組みなんでしょうか?
 
[草野]ezorockをもっと良くしていきたいと、スタッフ、ボランティア参加者みんなが思ってるんですね。なので疑問や問題点をみんなに出してもらって、もっと良い組織づくりや活動に結びつけるために書いてもらったんです。これを基に理事会で検討したりして、もっとみんなが活動しやすくなるように、且つ、社会的にも意義のある環境活動に繋げていくために意見の吸い上げをしていると言うことです。
 
___こうやって書かれたものが貼られてみんなの目に触れることで、会議でなかなか発言出来ない人への啓発に繋がるでしょうし、団体運営とともに人材の育成にも効果がある取り組みですね。
 
[草野]ezorockの特徴でもあると思うんですけど、時にはトップダウンの判断も大事だと思うのですが、出来るだけ日常の活動に対しては可能な限り意見を吸い上げて、みんなで参加しながらボトムアップして進めていくというところはezorockのこだわりのヒトツになっていると思いますね。

社会の変化するスピードが早くなってきたので、一部の人たちの意見だけで対応してくのにも限界がある時代が来てしまったと思うんです。そのためにも、出来るだけ多くの人たちの智恵とか技術を上手くコーディネートしてそれを形にしていかないと、追いつかなくなってきているんじゃないかなと。それぞれの長所短所を見極めていくというところでもありますね。
 
___組織内のコミュニケーションをとる上でも、このような機会を持つということは大切ですね。
経験を武器に
 
___スタッフには社会人もいますが、かなりの割合で学生メンバーが多く、ezorockから社会に送り出すという立場でもあると思うのですけど、その辺はどのように考えておられますか?
 
[草野]本当はもっと社会人の方に入ってきて欲しいんですよ。今8割5分くらいは学生なんです。学生は社会人に比べると時間があって、いろいろと吸収しようとする大事な時期なので、その世代と活動していくというのは、10年後20年後と見ていったときにはすごく大事なパワーと思ってますし、社会に飛び立つ前に環境という生きていく上で大事なことだったり、仕事をするのでも環境を破壊しながら仕事していても持続性にはならないので、営利活動をしながらも環境のことを大事にするという気持ちを持った人を輩出していくことが大事かなと思ってます。
 
___環境に関係ない職業に就いても、どんな部署に配属されてもそこから環境情報を社内に発信することは出来ると思うし、その効果で環境に配慮する人がもっと増えるかもしれない。もしかしたら会社が変わるきっかけになるかもしれませんね。

今ezorockで育てられている人たちが、ここでの思い出作りだけで終わるんじゃなくて、社会人になっても今の気持ちを継続してくれること望みたいですね。
 
[草野]そう言う意味でも、10年後にも今の気持ちを持ってくれる人を作るために、ちゃんと伝えていきたいと思うし、非常に大事な層かと思いますね。
 
___先程も地域の中に入っていくとか、見知らぬ人たちと一緒に活動していくとかなかなか社会人でも出来ない経験をたくさん出来るというのはezorockの強みであり学生にとって実戦経験を積むすごく良い場所だなって思います。
 
[草野]そうですね。ここが学びの場でもあり葛藤の場でもあったりして、今自分のスキルが社会に通用しないことだったり、学生のノリだけでは許されないことだったり、社会人でも変わらないとも思うんですけど、早い内にここで経験をして社会に出ていった時には、「ちょっとこいつは即戦力として力を発揮してくれそうだ」と思われるように、そして仕事が出来るようになってきて、チャンスを与えてもらって、且つそこで、「部長、そろそろ社内のごみ箱ちゃんとした方が良いと思うんですよね〜」って言うことであったり、「環境っていうのをどこかに入れないと、今の時代乗り切って行けませんよ〜」というような社内の中での提案が出来て変化を起こせるっていうパワーが大事かなと思うんです。

そのためには日常の業務であったり、筋道を通した展開が出来ないと、「君、環境のこと言ってるけど、仕事は全然だな」なんて言われたら話になりませんので、そういう両立できる人材を育てていきたいと思いますね。
 
___ezorockの若いメンバーたちの将来に多いに期待したいと思います。では、活動するに当たっての苦労や悩みなどありましたらお話ししていただけますか?
 
[草野]先程も言いましたけど、学生が多いといったところで、良い面でもあるんですけど、やっぱり社会の繋がりの中でやっていくには社会人の人が入ってきて欲しいと思うんですね。

社会人の一生懸命やる姿を学生が見ると、良い刺激になって、自分を活かすための鏡になるとか、この人みたいになりたいなとか、ちょっとだけ先輩、ちょっとだけ先に経験してきた人たちがいるというのは例えば対外的な対応でお話しすることだったり、提案することだったりを間近にすることで良い刺激になるんじゃないかと思うんです。なので、今はちょっとバランスが悪いですね。

それと、こういった団体なので仕方ないですけど、資金的な悩みというのは絶えない、リアルな話ですけどね。そういう意味では企業や高度成長期を作ってきた中高年の方っていうのも、豊かさは生み出して来たと思うんですけど、その分の負荷という物もあったと思うんですよ。そういったことで僕は一緒に活動していくべきだと思ってるんですね。

「なんか若い人たちがんばってるわ」じゃなくて、一緒に活動するのでも良いですし、手は出せないけども食べ物の提供であったり、資金の提供であったりとか、そういったことでもっと若い人たちの背中をプッシュして「支えるからがんばんなさいあんたたち」「次世代は任せるからちゃんとした良い社会を作って欲しいから応援するよ」と言うような仕組みや取り組みをもっとしていきたいなと思ってます。

そういう応援の言葉をいただければ、もっとがんばれますし、大きなパワーになりますからね。
「見える・美味しい・リサイクル」農業と繋がるのは必然だった
 
___今日、事務所に入る前にいっぱい大根が並んでいてビックリしたんですけど、「RSRオーガニックファーム」と書かれて売られていましたけどこれはどういった活動ですか?
 
[草野]これは画期的な企画なんですよ!循環型社会を再現している取り組みなんですけど、イベントから出た生ごみの一部を手作業で堆肥化して、出来た堆肥を畑に入れてじゃがいもと大根を作りました。そのじゃがいもをまたイベントの食材として戻していこうという、頭の中で描けるリサイクルなんですね。「見える・美味しい・リサイクル」と僕たち言ってるんですけど、今それを展開中です。

また、北海道で環境の活動をする上で、農業と繋がらないということはないですね。なにかしら必ず食の問題に繋がって、食量の自給率であったり、地産地消であったりと必ずキーワードとして出てきくるので、繋がって展開していることは必然だったのかなと思いますね。
 
___北海道は自給率約200%で高いと言われてはいるけども、北海道の人は全部北海道産の物を食べているかと言ったらそう言うわけでもないし、もっと地元の物に目を向けるということが必要ですね。
 
[草野]自分たちの食べ物は自分たちで作るべきだと思うんですよね。そういった意味で北海道は一つの島として分かりやすいですよね。山があって、畑があって、都市があって、海があって、島として非常に魅力的なので僕はいろいろと実践出来る面白いフィールドだと思います。
 
___最近は札幌近郊でも有機農家が増えていると聞きますし、これだけ食品偽装や異物・薬品の混入があったりする中、安心して安全な食べ物をどうやって食べるかとなると、農業にもっと注目して自分たちが入っていって循環させていかなければいけないと思いますね。そんな思いが詰まった大根がたくさん売れると素敵ですね。
 
[草野]そうなんですよ、そう言った意味でただ募金してくださいというより、大根買って下さいって言った方が自然ですよね。
 
___運営する上で活動資金は絶対必要なので、アースデイとかのイベントで売れるといいですよね。
 
[草野]北海道で野菜を作って、売って活動していくとうのも自然のような気がしますね。
 
___ここまで仕組みが出来ているから、これからまた新しい発想が広がって面白い展開になりそうで楽しみですね。
3回に分けてお届けする草野さんのお話、次回パート3では団体活動をする中での喜びや団体を強くするためのお話をして頂きます。
 
▲環境NGO ezorock
「野外で気持ちよく音楽が聞ける環境を残すために持続的に安心して暮らせる社会」を実現する」「50年後を見据えて北海道の若者から発信していく」「音楽をはじめとする身近なライフスタイルから環境の大切さを伝えていく」「環境問題の根底にある社会の構造を見据えて活動していく」「上記3点に関係する団体・個人をつなぐネットワークづくり」を目的に活動する市民団体。

ホームページ
http://www.ezorock.org/
 
▲キャンドルの灯りで楽しむ音楽祭「nico」
2009年1月17日(土)
詳細はhttp://nico.ezorock.org
▲オーガニックファーム
詳細はhttp://organic.ezorock.org

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